香港の著名なバンド、BEYONDのリーダーでボーカリスト、黄家駒さんが日本で亡くなって、今月末で28年になります。
本当は、命日の6月30日に掲載されるはずだった記事が、「アップルデイリー(蘋果日報・Apple Daily)」の廃刊に伴い、6月23日に早めて掲載されました。
今はもうネットも閉鎖されて見れなくなってしまっていますが、掲載された記事は、実はうちの老公(ロウゴン・広東語で旦那さん)・Benと黄家駒さんの知られざるエピソードを書いてくださった記事だったので、この記事を書かれた香港の有名なDJ、作家、司会者である陳海琪(チェン・ホイケイ)さんに許可をいただき、日本語にしてここに掲載させていただきます。
(下面列出中文原文)
【藍調時光(ブルースタイム)】黄家駒の古いピアノ
■家駒は常に自分の信じるもののために懸命に闘ってきた。たまに私が言葉を失うほど、あまりにも楽観的だったが、彼の悲しみは彼の歌の中に描かれている。
コラムニスト:陳海琪
6月30日は黄家駒の命日であり、音楽の天才がこの世を去ってから早いもので28年になる。
旧友の彼は、出会ったばかりの頃、プラスチック製の濃い赤の縁の眼鏡をかけていて、生活の中で起こった些細なことにも引っかかり、いつでも深く掘り下げて議論していたことを良く覚えている。ステージの中央に立っている家駒も普段の彼も、同じように並外れた生命力だった。彼の好奇心を刺激すると、午後の半分近くを果てしない哲学に耳を傾けるはめになる。冗談好きな友人の中には、彼のことを、「絶対に彼と議論しちゃいけない」「蜂の巣に閉じ込められて、トラブルに巻き込まれるよ」「誤解しちゃいけない、彼は些細な言い争いに勝とうとしているんじゃなくて、君を説得するまであきらめないよ」と言う人もいた。
家駒の中には成熟した魂が潜んでいて、昔からとっくに世の中を見透かしているようなところがあった。この力は純粋に現実での経験からのものとは信じがたく、私は天から授けられた叡智だったのだと思っている。
今日は家駒のあるエピソードについてお話ししたいと思う。当時の友人の一人、Benが私だけに話してくれた。Benは日本の会社で働いていて、家駒と出会うことになった。その頃は長い時間、香港でも東京でも、彼はいつも家駒のそばにいたのである。
ある日の午後、家駒は彼の家に遊びに行くと、家の中に古いピアノが置いてあるのを見つけた。それはBenの姉のもので、彼女が8級の試験に合格して以来、家の隅に放置されて埃をかぶっていたのだった。一目見て家駒は気に入り、思わず手を伸ばして触れ、ある種、一目惚れのような表情を浮かべた。彼が気に入った様子を見たBenは、姉に「もう必要ないんだから、彼にあげたら?お姉ちゃんにとってはガラクタだけど、彼にとっては宝物なんだから。」と言った。
家駒の新居に、盲目の調律師が調律にやってきた時、ちょうどBenもそこに居合わせた。調律が終わってすぐ、ピアノの前に座った時の家駒の満足げな顔は、何と表現したらいいのだろう?片手で子供が優しくウサギを撫でるように、ゆっくりと鍵盤を押し、ほんの数音鳴らした。そしてしばらくすると、そう、「海闊天空」のイントロが始まったのだった。
彼は無限の心を持ち、思索と悟りを信じ、浄土にいとも容易く到達する。大きな家や派手な車には興味はないが、BEYONDを光り輝かせることだけが、永遠に目指す道であり、家駒は常に自分の信じるもののために懸命に闘ってきた。たまに私が言葉を失うほど、あまりにも楽観的だったが、彼の悲しみは彼の歌の中に描かれている。
彼は自分の作品が光る道しるべとなることを願っている。
風の強い月のない闇夜でも、道行く旅人、皆を導く灯台に。
文:陳海琪
【藍調時光(ブルースタイム)】
ラジオDJ。作家。テレビ番組司会者。
ずっと信じていること:「風に逆らって歩いてこそ、飛び立つ力を知ることができる」
(以下原文掲載)
【藍調時光】黃家駒那一台舊鋼琴
■家駒從來為着自己信仰而苦拼,有時候他樂觀得令我無言,可他的憂傷都寫在歌裏。
專欄作家 : 陳海琪
6月30日是黃家駒忌辰,一晃眼這位音樂奇才已離開人世28年。
相識微時的故友,總記起他平日戴着副深紅色膠框眼鏡,生活周遭任何細小動靜的東西都會引起他注意,甚至隨時跟你深入探討一番。站在舞台中央跟尋常日子的家駒,同樣生命力非凡。激發起他的好奇心,幾乎需要花你大半個下午聆聽那談不完的哲理。從前我們一些朋友愛笑話這位先生,千萬不能和他爭辯,你當真陷進蜜蜂巢穴,惹禍上身,萬勿誤會他並不是為了贏一小場舌戰,而是確實要把你說得貼服才肯罷休。
家駒潛藏了一個老靈魂,有種世情彷彿早就看破,我從不相信這種力量是純粹現實的歷練,更多是上天賜予的智慧。
今天想告訴你一個關於家駒的故事。感謝當年一位朋友Ben獨家分享,而Ben正是在日本公司工作因此跟家駒結緣。那段歲月悠悠時光,從香港到東京,無不陪伴左右。某天午後,家駒跑到他家裏過日辰,發現屋內有一台舊鋼琴,原來鋼琴是屬於Ben的姐姐,曾經考過八級之後便一直丟在角落,幾乎沾滿了塵,家駒瞥見之後卻心生好感,忍不住伸手觸摸,動起相當愛惜表情,甚至有種一見鍾情的依戀。Ben看他喜歡到不得了,於是跟姐姐說:「既然你根本不再需要,不如送給他罷!既然是你的垃圾,看來是他的寶貝。」琴行有位盲人師傅到家駒新居幫忙調音,剛好Ben也在,音色調好了,家駒旋即坐到琴邊,該要如何形容他極盡滿足的表情?他的一雙手緩緩按下琴鍵,像溫柔的孩子輕撫小兔子般,就那麼幾個音色,然後再來一段,是的,《海闊天空》的前奏便這樣開始了。
家駒擁有無涯的胸懷,相信思索和證悟,咫尺到淨土。他從不稀罕甚麼大屋和名車,讓Beyond發光發熱,才是走向永恒的通道,從來為着自己信仰而苦拼,有時候他樂觀得令我無言,可他的憂傷都寫在歌裏。
他甚至希望自己的創作能夠成為一座燃亮的燈塔。
月黑風高夜,每個趕路的旅人都知道。
【藍調時光】
廣播人。寫作人。電視節目主持人。一直相信:只有逆風而行,才知道飛翔的力量。
私はお墓でしかお会いしたことない黄家駒さんですが、振り返って見ると、不思議なご縁がつながっていたりして、まるで灯台のように導いてくれている、と思う時があります。
このような素敵な文章を書いて下さった陳海琪さんに心から感謝しています。
Thank you very much for writing such a heartwarming article, Ms.Chan, Hoi-Kei!!