ちょっと長いですが、今回は映像制作の仕事のお話。
今まで制作の仕事は香港が中心だったのですが、コロナ禍や香港の政情不安を経て、アジアの拠点を香港からシンガポールに移すグローバルな企業が増えていることもあり、昨年からシンガポールとも仕事をしています。
シンガポールは両親と旅行に行ったり、バンドの公演で歌いに行ったことはあるけど、ガッツリ制作のお仕事をするのは初めて。
今回は以前、香港を拠点にしていた時にお仕事したイギリス人監督から声をかけていただき、その監督が現在在籍している、誰でも知ってるアメリカの某エンターテイメントの巨大企業のシンガポール支社とのお仕事でした。
シンガポールと言えどもアメリカ企業との取引なので、まずはベンダー登録(いわゆる業者登録)が色々大変で、色々なデューディリジェンス(Due Diligence・経営状況や財務状況などの調査)を受け、コンプライアンス(compliance・法令順守)のオンライン授業を受けたり、各ロケ地の詳細と予定の移動手段をすべて資料にして報告し、COVID-19の対策マニュアルも作成、プロデューサーとしてのリスク・アセスメント(Risk Assessment・リスク評価)のレポートを提出させられるなど、今までの業者登録より複雑で、撮影の仕事の前からすでに大変で、その巨大企業のメンバーの一員として仕事をすることの洗礼を受けました。。。もちろん、すべて英語です。
一番大変だったのは、そのリスク・アセスメントのレポート提出。私の英語のレベルなんて稚拙なものなので、とっても苦労しました。。。(笑)
コンサートでシンガポールに行った時、現地でお世話になった女の子はチャイニーズ系で、英語も北京語も話せたので、今回の担当者も中国語出来ると便利だなぁ~と思いましたが、チャイニーズ系ではなかったので、オール英語でコミュニケーションするしかなく。。。。
あ~~、英語上手くなりたい。中国語も下手なんですけどね・・・でも香港人みたいに、英語と中国語をmixして使えると便利なんですよ~英単語を忘れた時に、漢字で書いたりね(笑)
実は夏にひとつプロジェクトがあったのでうちの会社の業者登録は夏にしていましたが、プロジェクト自体はコロナ禍で流れてしまい、その後にいただいた今回のお話もずっとGOが出なかったので、これも飛んだんだろうなぁ~と思っていたのに、GOが出たのがほぼ一週間前・・・しかもクリスマス~年末にかけて地方二か所での撮影・・・
ベンダー登録は完了していたけど、夏とプロジェクトが違うのでリスク・アセスメントのレポート提出などはやり直し。時間がなさ過ぎて、「こんなの出来ない!」と投げ出すことも出来たけれど、相手先のシンガポール人のPM(Production Manager)の助けや、何とか周りの方々のご協力もあって無事終えることが出来ました。
撮影を終えたら、リリースフォーム(Release form)という、放映許可書を各ロケ地、各出演者から回収し、撮影スタッフとの覚書や撮影保険の証券の写し、もちろん最終のコストレポートなどを含む最終報告・ファイナルレポート(final report)を提出して、やっと制作費が全額請求出来るのです。(もちろん、半額はDeposit(前金)として撮影前に送金してもらっています。そうでないと、海外の仕事は一切受けません。)
今年に入ってから、デンマークの仕事も受けました。映画の賞を何度か受賞している、デンマークでは有名な監督さんの作品で、監督の会社との取引だったので、ベンダー登録などは特になく、映画のリサーチ段階のお仕事でした。
デンマーク人とは初仕事でしたが、仕事のやり方は特に変わったところはなく、香港やシンガポールと一緒で、基本、WhatsAppでやり取りし、証拠となる書類や複雑な資料などはメールにて送付、金額が”reasonable(妥当)”であれば、Depositも請求してすぐ送られて来るし、終わった後のbalance(残金)もすぐに送ってくれました。
共通して言えることは、海外の仕事は、言いたいことはハッキリ言わないと通用しない、言わずとも察してくれるだろう、という日本人的考え方をかなぐり捨てないと、自分自身が損をする、というところです。
そして、今は日本のドラマをうちの代表が手伝っているので、そのお手伝い。海外の仕事が減っているから、彼がフリーランス時代に受けていた日本のお仕事も受けています。
純粋に日本人だけの仕事も、それなりに海外との合作とは違った大変さがあります。今回は逆にハッキリ言われなくても空気を読んだり、気を回したりしないといけない。それが外国人の彼にとっては、違った意味でまた大変です。
日本のドラマ業界はずっと人手不足が続いていますしね。。。
それに日本はクレームを異常に気にする国民性だからか、「ここはダメ」「あそこはダメ」「土日はダメ」「大人数はダメ」「すぐクレームの電話が入るんでダメ」・・・と、そりゃもう、自治体も警察も、撮影に関して許可をくれないところが多いんです。
そりゃ、国を挙げて映画産業を応援している韓国の作品は強いわけだ、と思ってしまいます。まぁ、日本も地方では撮影の誘致に一生懸命な自治体さんもあって、それは本当にありがたいですけどね。
しかも、未だに公園などの撮影申請をFaxでしか受け付けないところも相変わらず多く、コロナ禍で問題視された日本政府のIT化の遅れ、ひしひしと感じています。
まぁ、結局どんな国との仕事も、違った大変さがあり、毎回苦労しますが、ひとつひとつプロジェクトを終える度に学びがあり、成長し、達成感を感じながら反省をする、その繰り返しです。
それは音楽の仕事も制作の仕事も一緒。どんな仕事でも、色々な国の人たちから学べる私は、毎回試練と学びをもらえる幸せ者なのかも知れませんね。