起業・経営・制作会社

『セクシー田中さん』問題について思うこと。

普段、時事問題などについて書いたりしないのですが、今回は色々普段から思っていたことがありまして、珍しく書きたくなってしまいました。

私は映画や音楽の小さな制作会社をやっているので、少なからず原作者とのつながりがあったり、自分自身が原作に関わったりする作品もあります。

原作者の自殺という最悪な結末を迎えた今回の件は、実際この作品に直接関わったわけでもないし(うちの代表の知人が関わっていたりするけど、わざわざ連絡取って聞くほど近い関係性でもないので)、報道から情報を得るしかないので、誰が悪いと言うつもりはありません。立場が違えばそれぞれの意見や、果たさねばならなかった仕事があるんだと思います。
それを良く事情を知らない人が責めることは出来ないなぁ、と思うんです。

でも、原作者とのトラブルというのは以前から業界内では多々あった問題で、原作者にとって何が一番辛いかというと、自分が命がけで生み出した作品に対するリスペクトがないことだと思うんです。

「0から1」を生み出すことは、本当に大変だし、そう誰でも簡単にできるものではないんです。それを得意とする人もいるけれど、それは本当にすごい才能。だからこそ、それに対するリスペクトを欠くような行動は、原作者を苦しめることになると思うんです。

音楽業界でもそれは同じ。

私も外国語曲の日本語詞のお仕事も何本かさせていただいていますが、原作者へのリスペクトを忘れたことはありません。とても難しい作業だけれど、原作者が伝えたかったことをなるべく日本語で表現できるように、忠実に日本語で書いているつもり。

またデジタル化が進んだ昨今、誰でもかれでもカヴァーソングを気軽にアップしています。
多くの人に作品が愛されるのは光栄で嬉しいことだけれど、他方で自分が苦労して生み出した作品がタダで使われ、しかも無断で変に使われたり、アレンジされてしまったり、苦々しい思いをしている原作者も大勢います。
JASRACNexToneなど音楽著作権管理事業者包括利用許諾契約がされたYouTubeニコ動のようなサイトで配信していれば、著作権者に分配が行くのですが、そのような管理事業者と契約されていない楽曲や、包括契約を結んでいないようなサイト、はたまた勝手にCDなどにプレスされて配布されてしまえば、それを全て追っていくことは不可能です。

こういう原作者が命がけで生み出したものに対するリスペクトのない人達は、本当に残念です。
きっと、みんな悪気があるわけでなく、単なる著作権に対する知識不足で、気軽な気持ちでやってしまっているんでしょうけどね。。。
みんながみんな、その業界でお仕事しているわけではないから。
それは理解します。

良く著作権の話をすると、
「どうせ金だろ?」
と言う人もいますが、は?それの何が悪いの?って思います。
お金はリスペクトを表す表現の一番分かりやすい手段です。

だからこそ、私は一緒にお仕事していただいた音楽家、役者さん、スタッフの方々には、その時出来る最大限のお支払いをきちんとする、ということを心がけています。予算にはもちろん限りがありますが、たとえ安くても、その人のことをリスペクトしていますよ、あなたに感謝していますよ、と伝えたいから。

色々企画を持ち込んだりしていますが、映画やドラマは漫画や小説など原作があるものが作品化されることが圧倒的に多いです。
というのも、ある程度原作が人気があることが担保になって、映像化になった時のリスクを減らせるから、オリジナルの映像企画を持ち込んでも、残念ながら相手にされないことの方が多いのです。(有名な監督や脚本家さんの作品だったら視野に入れてもらえることもありますが)

それだけ、原作にみんな頼って仕事させてもらってる
だから、忘れてはいけないんです。(自分自身にも言い聞かせます)

原作者は自分自身の命を削って作品を生み出していることを。

「攻撃したかったわけじゃなく…ごめんなさい」

この最後の芦原妃名子さんのXのポストが切なすぎます。。。きっと繊細な方だったんだろうな・・・

現在、ある香港映画の音楽コーディネート中。今日も大事な大事な広東語の脚本を、日本の作家さんが良く分かるように、心を込めて翻訳中です。

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