海外とのエンターテイメントの合作が難しくなっている時代。
6月末くらいに、某アメリカのエンターテイメント企業のシンガポール支社から、日本撮影のお仕事のオファをいただいて準備を頑張っていましたが、緊急事態宣言が出て、7月の撮影が延期に。。。
9月撮影を予定していますが、アメリカの企業は特にリスク評価が厳しいので、このコロナ感染爆発中の日本では、いまだ撮影日程は流動的です。。。
ということで、海外からなかなか作品が来ることが難しい今、うちの老公(ロウゴン、広東語で旦那さん)は、とある日本のドラマ制作の応援に入っています。
久々の日本作品に参加。
老公はフリーランス時代、50作品以上の日本映画やドラマに、日本人スタッフに混じって制作スタッフとして参加していました。でも、起業してからと言うもの、海外との合作が中心で、久しぶりの日本作品ということで、早めに台本を読みだした老公。
香港出身の彼にとっては日本語は外国語なので、当然日本人よりも読むのが遅く、ハンデがあります。
連ドラのように次々新しい台本が出てくるような作品では、激務で読む時間がないので、私が早口で朗読してあげたりしていましたが、今回は単発のドラマで時間的余裕があったので、自分で読み出しました。
しかも、小学生のように声に出して。
私も彼のお手伝いをするので、内容を知るのにちょうどいいや、と家事をしながら台本の朗読を聞いていると、あるシーンの場所の設定で、
「カンチョーの部屋」
と言うのです(笑)
聞き捨てならず、思わず、
「えっ?浣腸の部屋?(笑)」
と聞き直し、台本を見せてもらうと・・・・
「官庁の部屋」
でございました(笑)
イントネーションが違うだけで全然違う意味になってしまうんだから、言葉って難しいですよね~。
なぜ読み方がこんなにある?音読みと訓読み
老公のように香港など中華圏の人は、漢字が分かる分、欧米の人に比べて同じ漢字を使う文化の日本語は取っつきやすいと思いますが、香港の母国語の広東語も普通話(中国大陸の標準語)も、基本は一つの漢字に一つの読み。例外はありますけど、一回発音を覚えると、大抵読めたりするのです。
ところが、日本語の漢字には色んな読みがあって、しかも音読みと訓読みがあるじゃないですか。
これが香港人には難しいようです。
例えば「生」という字一つとっても、
音読み:人生(セイ)、一生(ショウ)
訓読み:生きる(イ)、花を生ける(イ)、生まれる(ウ)、生む(ウ)、生い立ち(オ)、生える(ハ)、生やす(ハ)、生蕎麦(キ)、生ビール(ナマ)、実が生る(ナ)
などなど・・・。
これだけあっても覚えられないのに、もはや
「芝生(しばフ)」「生憎(アイにく)」「弥生(やヨイ)」
まで来ると、宇宙的な広がりを感じるようです。。。(笑)
やっかいな地名や人名。
もう10年以上前になりますが、とあるドラマのロケ地について、老公は、
「そこは【キュウジュウキュウクリ】で撮影が決まったよ!」
と言うのです。。。
皆さん、もう分かりましたね?(笑)
そう、ロケ地は「九十九里」です。
どうやら、最初に日本語で数の数え方を習った時に、
「きゅうじゅうきゅう、ひゃーく!」
と習ったんでしょうね。
それで満を持して【キュウジュウキュウ】と読み、そこに日本のスタッフがみんな「クジュウクリ、クジュウクリ」と早口で言っているのを聞いて、
謎の【キュウジュウキュウクリ】
が誕生したと思われます(笑)
そして、晴れて【クジュウクリ】を覚えた老公と一緒に台本を読んでいたら、たまたまその台本の中の登場人物の名前に【九十九】さんが出て来ました。。。!
「キュウジュウキュウ?クジュウク?」
と無邪気に聞く老公に、私は残酷にも、
「残念っ!【ツクモ】でしたぁ~!」
と答えると、彼は絶望的な顔をしていました(笑)
もはや、人名とか地名とかは、日本人でもなかなか説明のしようがないですよね~
成田へ行く途中の千葉県のサービスエリア、【酒々井(シスイ)】はアウトレットもあって、空港にしょっちゅう通う外国人には少し馴染みがありますが、そのそばの街、【八街(ヤチマタ)】は最初なかなか覚えられなくて、彼がジャニーズの某グループの映画で八街のロケ地を探し出し、八街市役所の方とお仕事するのに何度も通って読めるようになりました。。。
日本人の私でさえも、秋田のロケ準備をしていた時、地名が難読過ぎて全然読めませんでした。。。
日本人でも馴染みのない地区は、全然読めないですよね~~
動詞の活用も難解。
これ、日本語教師の方は法則を知っているから、上手く教えられるんでしょうけど、日本語の動詞の活用の仕方も独特で、ホント、説明に困ります。。
例えば、日常の基本動作の「連用形」ってやつ。
「起きる」→「起きた」「起きます」
これは、そのまま「る」を「た」や「ます」に変えるだけだけど、
「歩く」→「歩いた」「歩きます」
え?「起きる」みたいに「く」を「た」や「ます」に変えるだけじゃダメなんだ?
「いた」「きます」になるの?
「走る」→「走った」「走ります」
は?今度は「った」「ります」になるわけ?
「跳ぶ」→「跳んだ」「跳びます」
「んだ」「びます」?・・・はー、もうお手上げ。
これで、「歩く」「歩いた」「歩きます」「歩かない」「歩くとき」「歩けば」「歩け」。。。
ってさらに細かく変化するんですよね。。。
こんな難しい言葉、良く無意識でしゃべってますよ、私達。
さらにやっかいな外来語。
さらに外国人を苦しめるのは、カタカナに変身した外来語。
英国領だった香港の人たちは、英語は英語そのものとして母国語の広東語の中に混じっています。話しているのを聞くと、”By the way”とか、 ”Of course” とか、普通に会話に英語が混じっているのです。
なので、日本独特のカタカナ英語は普通に日本語の新しい単語を覚えるに等しいようです。
以前、新婚の頃、老公が深夜ロケで帰りが遅かったので、ある料理を作っておいて先に寝ていたら、翌朝も早くロケに出かけた老公がテーブルにメモを残してくれていて、
「ワイトジュー、おいしかった。ごちそうさま」
と書いてありました。
「ワイトジュー」って分かります?
私はもちろん作った本人なので分かりましたが、正解は、
「ホワイトシチュー」です。
“White Stew”を彼なりにカタカナに直したら、こうなったらしい(笑)
発音に忠実にあえて直せば、「ワイトステュー」ぐらいが近いのかも?
”White”がなぜ日本では「ホワイト」になっちゃったのか?
別の外国人の方からも、クレームをもらったことがあります(笑)
「コーヒー」「ケーキ」「カレー」に「ハンバーグ」・・・
西洋料理に馴染みがある外国人にとっても、カタカナに直された食べ物の名前は新出単語に近いのです。
もし自分が外国人だったら、きっと日本語は難しいと感じたでしょうね~
日本語を上手く話せない外国の方がいたとしても、皆さん温かい目で見てあげてね!!